July 03, 201114:56

森と芸術

初めて、東京都庭園美術館を訪れました。
白金、いい場所ですねー。プラチナかぁ。

今回の展示は、「森と芸術」。

東京都庭園美術館「森と芸術」



 面白いテーマでした。研究テーマではメジャーな部類だろうけど、展覧会のテーマとしては、あまり見ないような・・・? かなり楽しめました。
 さらに、この朝香宮という最上流階級の館に絵画が展示されているというその雰囲気!ちょっとした夢物語みたい。

 構成は以下のとおり。
 1)楽園としての森
 2)神話と伝説の森
 3)風景画のなかの森
 4)アール・ヌーヴォーと象徴の森
 5)庭園と「聖なる森」
 6)メルヘンと絵本の森
 7)シュルレアリスムの森
 8)日本列島の森

 この展覧会での一番すてきだったのが、なんといってもコロー。もともとコローの作品は大好きですが、今回の≪サン-ニコラ-レ-ザラスの川辺≫は、そのもやののような深緑がものすごく、ものすごく美しくて、それが美しい額縁におさめられ、アールデコの小室の壁に飾られ、こんなにも間近に見ることができる…。すばらしかったです。
コロー《サンーニコラーレーザラスの川辺》




第1章 楽園としての森

人間にとって森は単なる木の集まりではありません。私たちは森を見て、森のなかを歩くときになにかしら心休まるもの、懐かしいもの、そして聖なるものを感じます。それは、かつて森でくらしていた人類の記憶がよみがえり、郷愁や憧れのかたちをとるのだともいえます。アンリ・ルソーの夢想した異国のジャングルや、ゴーギャンの描くタヒチの森には原初の楽園に住むかのようなエヴァ(イヴ)の姿があります。ボーシャンの素朴な楽園図にも、森へのノスタルジアがあらわれています。

 まず入った部屋に、ゴーギャンが。そのほかのものもみてみると、15世紀から20世紀まで、各時代のものがひとまず勢ぞろい。いつの時代にも、こういう感覚があるんですかね。
 ここでは、流れとはあまり関係ないのですが、
 ●ヨハン・アンドレアス・ブフェッフェルとその工房≪創世記(ショイヒツァー著『神聖自然学』より)≫1732-37刊行、たちだ市立国際版画美術館
 が好きになりました。
 当時の、本、です。サイズは43センチ×27.5センチと、意外に縦長。そして厚い。

 ●ジョン・マーティン≪人類の堕落(『聖書』より)≫1831年
John Martin 
 挿絵とのこと。線が細く細かく、濃淡が美しい。奥に見える湖や山や空、雲が美しい。。。ラピュタみたいだ。
 これが、19世紀初頭のひとたちの考えた楽園。確かに山はみえるけど、基本的に平地なんだね。



第2章 神話と伝説の森

西洋美術にまずあらわれる森の表現には、アダムとエヴァのくらす楽園のイメージだけでなく、いっそう古いギリシア・ローマの神話や、ケルト・ゲルマンの伝説に取材したものが多く見られます。神々や妖精たちの出没する物語の舞台としても、森はしばしば版画や絵画の名作のなかに登場していました。
 ここでなんとラトゥールと遭遇。章題からは想像できなかったので、新鮮に驚き。また、その前までに展示されていたのがシェークスピアの挿絵だったものですから余計に。
 そのシェークスピア。1796年の挿絵です。
Henry Fuseli 

 ●ヘンリー・ヒューズリ≪森:「真夏の夜の夢」第4幕第1場≫
  (『シェークスピア名場面版画集』より

 これが18世紀末の作品。
 白黒の濃淡が、ものすごく美しい・・・。薄い部分が限りなく軽く浮いているよう。
 人物の描写も、なんというか現代的? 「この前、出版された本の挿絵です」といわれても違和感なし。



第3章 風景画のなかの森

ヨーロッパのいわゆる風景画は、17世紀ごろにようやく成立したものです。クロード・ロランはその巨匠のひとりで、はじめて森そのものを絵の主題にしました。18世紀には自然回帰の風潮にのって、ゲインズボロなどの風景画家が輩出し、19世紀にいたると、森は風景画に欠かせない主題となります。クールベの写実的な自然描写をへて、バルビゾン派のコローなどの描く森には、近代人の郷愁に似た情感が漂っていました。
 私の大好きなジャンル:風景画です。

●ディアズ・ド・ラ・ペーニャ≪フォンテーヌブローの森の小径≫1872年

 これは、画もさることながら額縁との調和具合がすとんと落ちてきた作品。
 展覧会に行く楽しみの一つは、額縁だと思う。
 画を引き立てるのか、馴染んで一体化するのか、イメージを強めるのか。。。
 額縁の歴史とかいわれとかあったらもっと面白いのに…と素人は思ったりする。

●カミーユ・コロー≪サン-ニコラ-レ-ザラスの川辺≫

 今回、一番好きだった作品です。コローはもともと好きだったけど、こうやってみるとまた一入。


第4章 アール・ヌーヴォーと象徴の森

19世紀後半には、自然界を新たな目で見る芸術運動が生まれます。アール・ヌーヴォーのガラス工芸の代表者エミール・ガレは、「わが根源は森の奥にあり」と述べ、木々や花々をはじめとする森の生物をモティーフの中心にしました。絵画の領域でも、植物界をもはや風景ではなく、象徴的な図像として描くサンボリスムの運動がおこります。ゴーギャンとともにブルターニュ地方の「愛の森」(※)へ通ったセリュジエは、中世ケルトの森の伝説を回顧するかのように、郷愁をたたえた絵画をのこしました。
※フランス、ブルターニュー地方にある ポン-ダウェン にある森のこと。ゴーギャンの描いた村として知られる


Louis-paul-Henri Serusier ●ポール・セリュジェ≪ブルターニュのアンヌ女公への礼賛≫1922

 今回のポスターにもなっています。
 これ、なんと1922年、20世紀初頭、ついこの前の作品なんですね!
 しかも、油彩だそうで…。わたし、かなり古いタペストリーかと思っていた…。

 背景の文様化された森は、ナビ派をあらわしているのだそう。
 また、騎士の捧げる若木の鉢は、ケルト人の森と樹木への信仰を前提に、苦難の地ブルターニュにこれを植えることで新たな生命を得られるだろうことを暗示しているらしい。

 でも何度も繰り返すけどこれ15世紀のタペストリーでは・・・


●エミール・ガレ≪風景文ランプ≫1902−1914年頃
 実際に電気がついてました!!! しかも、鎮座している場所は、暖炉! 大理石だろうか、マーブルの茶色。背景も、ローマ風アーチ柱と木と果物が描かれ、中央奥部にはポセイドン? ちょっとちゃちい感じがする神様だったけど、ああ、昔はこんなふうに置かれていたんだなぁとドキドキしてしまいました。


第5章 庭園と「聖なる森」、第6章 メルヘンと絵本の森

森は19世紀までの西洋美術史において、以上のように重要なテーマやモティーフとなってきただけではなく、芸術と文化のさまざまな領域にあらわれ、各時代に不可欠のイメージをのこしてきました。森をかたどる小宇宙のような空間、森から生まれたオブジェや玩具、森の博物誌、森を舞台にしたメルヘン絵本など、森にまつわるさまざまな作品や資料の数々も、この展覧会の大きな部分を占めています。

Colonnade et jardins du Palais Medici ●ジャン−フランソワ・ジャネニ≪メディチ家の柱廊と庭園≫1776年頃

 メディチ、というだけで燃え上がってしまったため掲載。
 しかし、最盛期から300年後にはすでにこんなイメージになっていたんだね、メディチ。
 今から300年前というと、1700年…江戸時代も末期、世界はフランスのルイ14世晩年、オーストリアとプロイセンが台頭し始めたころか?・・・するともう立派な「歴史」「前時代」ですね(苦笑
 私達にとっては300年前も600年前も過去の歴史だけど、300年前の人にとってもその300年前はやっぱり歴史、過去なんですな。



 そのほか、童話の挿絵等々、いろいろな展示があったけど、正直、展示そのものには興味がもてず・・・。展示会の一部として登場した意味、位置づけはとても興味深いとは思うのだけど。


第7章 シュルレアリスムの森

20世紀、第一次世界大戦後になると、風景画の退潮とともに、森を描く美術作品は少なくなりましたが、ただシュルレアリスムの芸術家たちだけは、森を現代にふさわしい神秘や幻想のありかとみなし、しばしば好みのテーマとしました。マックス・エルンストをはじめ、マグリットやデルヴォーのような巨匠たちの作品には、それぞれ独自の森の表現が見られます。さらにシュルレアリスムの影響もうけ、民俗学的な見地から森の本性に迫ろうとした日本の画家に、岡本太郎がいたことも忘れてはならないでしょう。

The ResumptionLe Banqueet

●ルネ・マグリット≪再開≫1965
●ルネ・マグリット≪宴≫1951


 階段を昇ると、そこにはマグリットの3枚の画が。(残り一つは≪常套句(共通の場所)≫)
 その手前には、テーブルの脚が鳥の足になっていて、卓には三股の足跡がついている、面白いものが。
 ちょっと贅沢♪
 ただ、、、、その先に展開されていたシュルレアリスムの作品は、難解か、日常すぎて芸術とは思えないか、といった具合で、私には分からない展示だったなぁ…。だって、植物をアップにすると、それが別のモノにみえてくる、という写真については、そんなん小学校とか中学校の図画工作でやるじゃん…という気持ちになってくるから。当たり前だと思っているものをとらえなおす、というのは重要だろうけど…うーん・・・。。。

 展示の最後には、「もののけ姫」の背景画カット2が展示されていました。
 こうやって展示されていると、とてもアニメの背景画とは思えない…。
 そして、ラピュタがみたくなるのでした。





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